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「偶然性」理論を提唱したエドウィン・ガスリー [心理学]

米国のエドウィン・ガスリーがその関心を心理学に向けだした1920年代までには、学習の刺激━反応モデルが殆ど全ての行動主義理論の土台を為していた。

イヴァン・パヴロフの「古典的条件づけ」から派生したそのモデルによるなら、特定の刺激結合(例えば、食餌を与える事とベルを鳴らす事)を繰り返し被験者に提示すると、最後には条件づけられた反応(例えば、ベルが鳴らされただけで涎が沸き起こる)が生じるようになる。

ガスリーは厳格な行動主義者ではあったが、条件付けが成功するには強化が不可欠だとは考えなかった。


ガスリーの考えでは、特定の刺激と反応の間の完全な連合は、それらが最初に顕れた時に作られる。

ガスリーの単一━思考学習理論は、「パズルボックス」の中に捕えられた猫の観察を通じてガスリーが行った研究を土台にしている。

猫は一度脱出の方法を知ると、脱出と自らの行動との間に連合を作りだし、その行動がその後の機会の度に繰り返された。


ガスリーの言う所では、同様にモルモットは、1度餌のありかを知ると、空腹の時には何処に行けば良いのか分るようになる。

ガスリーは自身の考えを拡張して、「偶然性」理論を確立するが、これによれば、「ある刺激が、その後に生じる度毎に続いてその運動が惹き起されるようになる」。

刺激━反応連合の学習から学ばれるのは、行動ではなく運動だ。


関係しあう運動が結合して、ある動作を形作る。

反復は連合を強化するのでは無く、様々な作用の形成へ通じて行くのであり、それらの作用が結びついて行動を形作るのに至るのだ。


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壮大な天与の迷路、これこそ私達人間の世界だ [心理学]

エドワード・トールマンは、米国の行動主義心理学の主導的人物と目されてはいるものの、ソーンダイク及びワトソンとはとても異なるアプローチを採用した。

トールマンは、心理学は客観的かつ科学的な実験によってのみ研究され得るという行動主義の基本的方法論には賛意は示すものの、知覚や認知、動機付けといった精神過程にも関心を示していた。

ドイツでゲシュタルト心理学を学んだ折に、そうした問題に出逢ったのだ。


それまでは分断されていたこの2つのアプローチの橋渡しする事で、トールマンは条件付けの役割に関する新たな理論を発展させ、彼の用語では「目的的行動主義」、今でいう認知的行動主義を創造した。

トールマンは、(行動は刺激に対する自動的な反応によって容易に学ばれると言う)条件付け学習の基本的前提に疑問を投げかけた。

トールマンの考えでは、動物は周囲世界について、報酬で強化される事無く学んでおり、後になってその知識を行動の決断に際して活用もする。


トールマンは、迷路とモルモットを用いて一連の実験を計画したが、その目的は学習における強化の役割の吟味にあった。

迷路脱出に成功する度に毎日食餌という報酬を与えられたモルモットのグループと、6日経ってようやく報酬を与えられたグループ、更に2日後に報酬を与えられた第三のグループを比較する事でトールマンの考えは裏付けられた。


第2、第3のグループは、食事の報酬が与えられた後の日の迷路脱出実験においても、殆ど誤りを犯さなかったのだ。

これは、これらのグループのモルモットが迷路の中での自分たちの辿るべき道を既に「わかって」おり、報酬を受けるよりも前にそれを学習してしまった事を証明している。

一度報酬が与えられたなら、モルモットは既に確率されている「認知マップ」を活用して、より早く迷路を脱出することさえ可能になる。


トールマンは、モルモット達の最初の学習期間━その際には、未だ明確な報酬は与えられていない━を「潜在的学習」期間と見做す。

トールマンの考えでは、人間も含めてあらゆる動物は、日々の暮らしを営む中で、周囲世界についての認知マップを作り上げる。

この「壮大な迷路」は、その都度特定のゴールを位置付けるのに用いられ得る。


トールマンは、私達が毎日の移動の中で様々な場所をどのように覚えているかを例にだす。

私達は、ルート上にあるどこかを特定する必要に迫られない限り、自分が既に知っているはずの事を一々思い起さない。

更なる実験で、モルモットが学習するのは単に特定の場所に至るのに必要な曲がり角ではなく、場所の感覚である事が明かになった。

『新行動主義心理学━動物と人間における目的的行動』の中で、トールマンは潜在的学習と認知マップについての自らの理論の概要を提示し、行動主義の方法論とゲシュタルト心理学を結び付けて、認知と言う要素を導入した。

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