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本能は力動的なパターンだと主張したヴォルフガング・ケーラー [心理学]

  19世紀後半に、当時支配的であった思想の流れに同意できなかったドイツの心理者グループが、後にゲシュタルトと呼ばれる事になる。科学的で明確に全論的な特徴を備えた新しい手法を発展させた。マックス・ヴェルトハイマーとクルト・コフカと共に新しい運動を立ち上げたヴォルフガング・ケーラーによると、この語は「パターン」を意味すると同時に、 彼らの理論に適用される場合には「組織化された全体」を意味する。ゲシュタルト心理学(大分後になって登場したゲシュタルト療法と混同してはならない)は、知覚や学習、認知といったといった概念は研究されるべきで、それを構成する隅々の部分を探究する形で研究されてはならないとの出発点としていた。

 ケーラーの考えでは当時の心理学の主流であった行動主義は、余りに単純で、知覚のダイナミック性質を見底なっいる。パヴロフとソーンダイクは、動物は単純な刺激-反応の条件付けを通じて、試行錯誤を経て学習すると主張したが、ケーラーに言わせれば、動物には洞察能力と知能がある。この考えをケーラーは、1913年から1920年にかけてテネリフェ島の類人猿研究所の所長をしていた時に、テストする機会を持った。一連の問題解決課題に取組むチンパンジーを研究した。


洞察にもとづく学習

 ケーラーの考えは観察によって裏付けられ、問題解決と学習はゲシュタルトの観点から説明可能である事が明らかとなった。手の届かない場所にある食餌に手を伸ばすといった問題に直面した場合、チンパンジーは最初は試みても上手く行かないのでフラストレーションを示すが、暫く間を置くと、状況の再検討を行って、ある種の解決法を試行する。ここには食餌に到達する為に、チンパンジーの居る場所の周囲に転がっている棒や木箱といった道具を用いる事も含まれる。その後、同じ課題に直面すると、チンパンジーは立ち所に同じ解決法を適用する。ここからケーラーは、チンパンジーの行動は現にある過程というよりは認知的な試行と錯誤の過程を示していると結論した。チンパンジー達は先ずここからケーラー心の中で問題を解決し、洞察を得た(「ああそうか」体験の瞬間)後漸く、自分達の解決法を試行する。頃れは、学習は刺激に対する反応によって条件付けられており、報酬によって強化されると言う行動主義者の見解とは対照的だ。チンパンジーは、報酬を受け取る事によってではなく問題を知覚する事で学習する。

 これがケーラーによる行動の力動的モデルの例証となった。それは報酬に対する反応と言う受動的学習ではなく、知覚における組織化を含む。錯誤や休止、知覚、洞察、試みと言った契機を含む、洞察による学習パターン(ゲシュタルト)は、能動的なものだ。しかし、だからと言って問題を解決しようとしているチンパンジーの個々の試みが見ている観察者に対して明白な事だという訳ではない。その主たる理由は、チンパンジーの心の中で生じているはずの知覚の組織化を見る事はできないと言う点にある。訳ではない。私達が本能と呼ぶ、問題の解決に対する一見した所自動的に思える応答は、洞察による学習というこの過程に影響されたものであり、それ自体が能動的で力動的なパターンだ。

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